はじめに
認知症とは、脳の病気や障害などによって、認知機能(記憶、判断、理解、論理、計算、学習、言語、注意、遂行機能など知的な機能全般を認知機能と言います)が低下し、日常生活に支障をきたした状態をいいます。
認知症の症状
認知症の症状は、記憶、言語、視空間認知などの認知機能の障害と、それに伴う行動、心理症状(BPSD:Behavioral and psychological symptoms of dementia)があります。
認知機能の障害
- 全般性注意障害
- 周囲の刺激を受け止め、選択して、一貫した行動をするために必要な機能なので、機能が低下すると、複雑なことを記憶したり、理解したり、反応したりすることが難しくなります。
- 遂行機能障害
- 目的を持って、計画を立てて物事を実行し、その結果から修正しながら進めていく機能なので、機能が低下すると、仕事や家事が上手く出来なくなります。
- 記憶障害
- 誰でも物忘れをすることがありますが、年齢相応の物忘れ、度忘れは、しばらくすると思い出したり、単純な事項を忘れてしまうだけで(朝食の献立が思い出せないなど)、日常、社会生活に支障は生じません。対して、認知症の記憶障害では、出来事(エピソード)全体を忘れてしまい(朝食を食べたこと自体を全て忘れてしまう)、日常、社会生活に支障が生じる物忘れです。
- 失語
- 言葉が出にくくなったり、理解できなくなったりします。
- 視空間認知障害
- 電気延長コードがヘビに見えたり、いないはずの人物が見えたり、車でバック駐車が下手になったりします。
- 失行
- 日常生活でいつも行っていた動作ができなくなったり、道具を上手く使えなくなったりします。
- 社会的認知の障害
- 社会的に適切な行動が取れなくなります。
認知症に伴う行動、心理症状(BPSD)
- 活動亢進
- 焦燥、暴言、暴力(噛み付く、殴るなど)、徘徊など
- 精神病様
- 幻覚、妄想、夜間行動異常、睡眠障害など
- 感情障害
- 抑うつや不安など
- 活動低下
- 無気力、情緒の欠如、異常な食行動(異食、過食)など
認知症の診断
複数の認知機能に障害があり、そのために日常、社会生活に援助を必要とする状態で、せん妄や他の精神疾患が除外されるものです。BPSDの有無は問わず、認知機能が以前と比べて低下していて、日常生活に支障があることが必須です。神経学的検査、神経心理学的検査、脳波、脳CTや脳MRI、脳SPECT(単一光子放射断層撮影)や脳PET(陽電子放出断層撮影)などの検査も必要に応じて行われます。
認知症の原因
認知症や認知症様症状を来す疾患は多数におよび、中には治療により治癒が見込める疾患も含まれるため、早期の適切な診断、治療や処置が望まれます。
- 神経変性疾患
- アルツハイマー型認知症、前頭側頭葉型認知症、レビー小体型認知症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、ハンチントン病、嗜銀顆粒性認知症、神経原線維変化型老年期認知症など
- 脳血管性認知症
- 多発梗塞性認知症、小血管病変性認知症、低灌流性血管性認知症、脳出血性血管性認知症、慢性硬膜下血腫など
- 脳腫瘍
- 原発性脳腫瘍、転移性脳腫瘍、癌性髄膜炎など
- 正常圧水頭症
- 頭部外傷
- 無酸素性あるいは低酸素性脳症
- 神経感染症
- 急性ウイルス性脳炎、HIV感染症、クロイツフェルト・ヤコブ病、亜急性硬化性全脳炎、進行麻痺、急性化膿性髄膜炎、亜急性あるいは慢性髄膜炎、脳膿瘍、脳寄生虫など
- 臓器不全および関連疾患
- 腎不全、透析脳症、肝不全、慢性心不全、慢性呼吸不全など
- 内分泌機能異常症および関連疾患
- 甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症、反復性低血糖など
- 欠乏症、中毒症、代謝性疾患
- アルコール依存症、一酸化炭素中毒、ビタミンB1欠乏症、薬物中毒、金属中毒、ウィルソン病など
- 脱髄性疾患や自己免疫性疾患
- 多発性硬化症、ベーチェット病など
- 蓄積症
- 副腎皮質ジストロフィー、神経細胞内セロイドリポフスチン症、など
- その他
- ミトコンドリア脳筋症、進行性筋ジストロフィーなど
認知症かもしれないと思ったら
認知症が心配なときは、まずはかかりつけ医に相談し、認知症サポート医や認知症疾患医療センターの専門医療機関を受診しましょう。
- 草加八潮医師会
- 認知・物忘れ相談